私は元アコムの者です
私がアコムに在籍していたのは、2000年2月から、2004年10月までの約4年間です。
私が初めて裁判所に行くように上司から命じられたのは、2001年1月です。
もうじき入社してから1年が経過しようとしていた時期です。
カウンター業務も大分、板についてきており、自信を持って審査を出来るようにたってしばらく経った時でした。
その日の裁判の内容は、和解を申し出ているので、この金額の範囲内で話を成立させろとの指示でした。
債務者の特徴
債務者は、30歳・男性会社員。年収500万円。どこにでもいそうな典型的なサラリーマンです。
アコムに対しての債務は50万円でした。
一応ロープレを何度か行い裁判当日を迎えました。
あまり前の晩は良く眠れませんでした。緊張していたのだと思います。
私はアコムの新宿支店で働いていました。
土地柄やんちゃな人が多いエリアです。
新宿支店の特徴は、8割が新宿区以外のお客さんです。
要するに地元でお金を借りるのは嫌な人が多く、出かけたついでの新宿でお金を借りようという人が多かったです。
裁判当日
さて裁判ですが、その日は朝から冷え込んでおり、天気は昼過ぎからまとまった雪の予報。
支店を出る時に小雪が舞い始めていました。裁判の開始は10時。9時30分に霞が関につきました。
地下鉄で新宿から丸の内線で駅が1つ進む毎に緊張感が増してきます。
1つの裁判と言うのはこんなにプレッシャーを感じるのか・・・。
霞が関に着いた頃には緊張がピークでした。裁判所は目立ったので直ぐにわかりました。
私は、てっきりテレビで見ている裁判のように、民事裁判なので、被告・弁護側はないのは知っていましたが、1つの法廷で1つの案件を行うものだとばかり思っていたのです。
法廷に入廷してビックリしました。
傍聴席の8割が埋まっているのです。
この債務者はそんなに有名人なの?その様に思う以外、その時の私には裁判が始まるまでわかりませんでした。
10時になって裁判官が入廷してきました。
流石に裁判所だけあって時間には厳格です。
まだ緊張はかなりしていました。
これだけの傍聴席が埋まっている中、初めての裁判を迎えるのです。
緊張するなと言うのが酷というものです。
しかし、この私の思いとは裏腹に、裁判がスタートしました。
なんとこの傍聴席にいる人の殆どが消費者金融の社員さんです。
よく考えれば皆、身なりはしっかりしているなあとは思いました。
しかし、そこまでは冷静に見る事がこの時は出来ませんでした。
実は民事裁判。特に金銭関係の消費者金融がらみの裁判は集団審理で、同じ法廷で20件位を順番に裁いていくのです。
つまり傍聴人ではなく、スーツ組の殆どは、裁判をしにきた消費者金融の社員です。
最初に気が付いていたら、どんなに気持ちが楽だったか?
今思えば笑い話で済みますが、当日は本当にあそこまで緊張したのは友人の結婚式のスピーチよりもはるか上でした。
私は7番目に呼ばれました。打ち合わせの通り、裁判官が『意見書に和解に応じるとありますが、間違いありませんか?』と尋ねられたので、『間違いありません』と答えました。
『それでは、本件は和解が成立したと認めます。宜しいですね?』『はい』
これで終了です。
本来ならその日の内に和解案をまとめるのが一般的ではありますが、そこまで余裕が無かったので、1度社に持ち帰り正式に返答します。
そう答え私の出番は終了。
気が付けば11時。
天気予報だと雪が本降りになってくる時間帯。
法廷から当然外は見えませんから、外の状況は全くわかりませんでした。
裁判所の1階ロビーで支店に連絡し、今、終わりましたと報告をすると、13時までに戻ってくれば良いから外で昼を食べて来ていいとの事だったので外を見ると、ボタン雪。
取りあえず新宿に戻っておいた方が無難と思い新宿に戻りました。
裁判を終えて思うこと
裁判のシステムを知らないだけで軽くパニックになってしまいますから、誰にでも出来る仕事ではないのがわかりました。
何故、女性社員は裁判に行かないかの意味もわかりました。
裁判所で感じた事は、焦らず、指示通りにしていれば、先ず問題はない。
余計な事は一切言わない。聞かれた事でわからない事があったらいい加減な事はいわず、確認しますと答える。
いくら消費者金融と顧客の裁判とはいえ、法的効力をその判決は持っています。
これは債務者と債権者(消費者金融側)両方に同じ効力が発生します。
必ず和解でない限り判決は白か黒です。その時に出た判決には、どちらも従わなければいけません。
そんな事を最初から分かっていながら教えない支店長の愛の鞭と言った所でしょうか?
応援で他の支店に行き、話を聞くと、教える支店長と教えない支店長がいるようです。
私の場合は完全に後者です。
どの社員も初めての裁判所は物凄く緊張したといいます。
その経験が後に生きてきます。
裁判所に初めて行ってあの独特の雰囲気に飲まれない社員がいたとしたら、モンスタークラスのもの凄い強いハートを持っていますね。
残念ながら、その様な社員とは、私は遭遇した事はありません。
裁判所は何回も行っている内に慣れとは怖いもので緊張をしなくなります。
やはり場数を踏むことが非常に重要です。
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